シックハウス症候群と言う言葉を知らない方はもういないと思います。
大きな社会問題としていたるところで取り上げられていますね。15年7月に施行された改正建築基準法では『クロルピリホス発散素材の完全使用禁止』と『ホルムアルデヒドの内装材への使用制限』を明記し、そして『24時間機械換気装置の原則的設置』義務を設計者・施工者に課しています。また、13種類のシックハウスの原因となる物質について、厚生労働省によって基準値が設けられています。
住まいはそこに住まう人が健康で楽しく暮らすことができ、元気に飛び出し安心して帰ってくることのできる、いわば基地のような場所。より安全に快適に、健康に暮らすことができるようにと用語集の第一弾はシックハウスについて取り上げました。
《シックハウス症候群》
近年、主に新築あるいは改装した家などで起こるようになった病的症状をいい、化学物質過敏症の一種とされています。建材・内装材や家具製造の際に使用される接着剤や塗料などに含まれる「有機溶剤」や、木材を虫などの生物の食害から守る「防腐剤」、またはそれに類する「揮発性有機化合物(VOC)」に影響されているものと考えられていますが、発生のメカニズムは不明の点も多く、これから研究が進むと思います。
症状は倦怠感、慢性疲労、めまい、頭痛、思考力・注意力・意欲の低下、湿疹、目やのどの痛み、イライラ、怒り、感情の爆発、寝つきが悪い、朝起きられない、などですが、これらはシックハウス症候群固有の症状でないため他の疾患と錯覚しやすく、また個人差が大きいのも特徴です。過去には気づかずに自宅療養をしたために悪化したケースもあったようです。
昭和30年前後からの高度経済成長期の住宅建材の大量供給にあわせてプリント合板などの新建材が盛んに使用されてきましたが、近年住宅が特に冷暖房効率を向上させるために高気密化が進んだことなどから換気が不十分で悪化しやすいとされています。原因物質を生活環境から減らすために十分な換気や居住環境の改善が望まれています。近年では原因物質を含まない建材や接着剤も開発されており、こういった製品を積極的に取り入れる動きが見られます。
《揮発性有機化合物(VOC)》
常温常圧で大気中に容易に揮発するホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどの有機化学物質の総称です。建材の接着剤や塗料として使用され揮発することによって空気を汚染し、住む人に健康被害を与えます。「VOC」は「Volatile
Organic Compounds」の略です。
《ppm》
Parts per millionの略です。100万分の1を指します。
《ホルムアルデヒド formaldehyde》
シックハウス症候群の原因となるVOCの中でもっとも早くから問題視されていたものです。刺激臭のある無色の気体で、35〜37%水溶液をホルマリンといいます。合板、木質建材、壁紙、家具に使用される接着剤などに多く含まれます。揮発して室内に発散することで、皮膚炎、呼吸器疾患、神経障害などをもたらし、発ガン性も指摘されています。
建材等に含まれるホルムアルデヒドは温度や湿度が高いと揮発しやすくなります。例えば、湿度60%の場合、温度が20℃の方が10℃の場合に比べて2倍も濃度が高くなり、湿度が60%だと40%に比べて約1.5倍も濃度が高くなります。ですから冬よりも梅雨から夏にかけてホルムアルデヒド濃度は高くなります。
人体への影響は0.08ppmくらいで臭いを感じる、3ppmでは目や鼻に刺激が起こる、4〜5ppmでは呼吸器に不快を感じる、涙が出るなどの症状が現れます。
平成15年7月に改正建築基準法が施行され、内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材の面積が制限されるようになりました。
《トルエン》
無色の液体でシンナーのような臭いがあります。接着剤、塗料の溶剤や希釈剤として用いられたり、自動車等のエンジンのアンチノッキング剤としてガソリンに添加されることがあります。0.048ppmくらいから臭いを感じ始め、濃度が高くなると目や気道に刺激が起こり、疲労、吐き気、また中枢神経にも影響を与えます。ひどい場合には精神錯乱などをきたすことがあり、意識低下や不整脈を起こすこともあります。
《キシレン》
無色でガソリンに似た臭いがあります。用途はトルエン同様です。高濃度ではトルエンと同じ様な影響があり、200ppmほどの濃度で明らかに目、鼻、のどが刺激されます。
《パラジクロロベンゼン》
通常無色または白色の結晶で特有の刺激臭があります。家庭内では衣類の防虫剤やトイレの芳香剤として使用されています。トイレに入ると漂う衛生的な臭いはパラジクロロベンゼンによるもので、トイレに発生する虫などに忌避効果があるといわれています。市販の防臭剤のほとんどの成分に使われていますが、以前からアレルギー疾患や肝臓障害などが指摘されています。パラジクロロベンゼンは15〜30ppmで臭気を感じ、80〜160ppmで大部分の人が目や鼻に痛みを感じるようになります。
《エチルベンゼン》
無色で特有の臭いがあり、トルエンやキシレンと同じ様に、接着剤・塗料の溶剤や希釈剤として用いられます。10ppm以下でも臭いを感じ、数千ppmでめまいや意識低下等の中枢神経症状が現れます。
《スチレン》
無色もしくは黄味を帯びた油状の液体で、特徴的な臭いを持っています。家庭内ではポリスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、ABS樹脂、イオン交換樹脂、合成樹脂塗料等に含まれる高分子化合物の原料として用いられます。60ppm程度で臭いを感じ始め、200ppmを超えると強く不快なにおいを感じます。600ppm程度で目や鼻に刺激を感じ、800ppmになると目やのどに強い刺激を感じ、眠気や脱力感を感じるようになります。
《クロルピリホス》
有機リン系の殺虫剤で、家庭内では防蟻剤(シロアリ駆除剤)として使用されていましたが、平成15年7月改正建築基準法が施行され、居室を有する建築物への使用が禁止されました。軽症では倦怠感、頭痛、めまい、吐き気等の中毒症状、重症では縮瞳、意識混濁、痙攣等の神経障害を起こします。
《ダイアジノン》
無色のやや粘ちょう性の液体で、弱いエステル臭があります。有機リン系の殺虫剤でペット用の首輪、マイクロカプセル化したゴキブリ用残留散布剤として使用されています。クロルピリホスと同様の中毒症状があります。
《アセトアルデヒド》
純品は無色の液体で刺激臭があり、薄い溶液では果実の様な芳香があります。エタノールの酸化によって生成されます。ホルムアルデヒド同様接着剤や防腐剤に使用されるほか写真現像用の薬品としても使用されます。蒸気は目、鼻、のどに刺激があり、目に入ると結膜炎や目のかすみが起こります。長期間接触すると発赤、皮膚炎を起こすことがあり、高濃度の蒸気を吸入すると気管支炎や肺浮腫、それに麻酔作用、意識混濁等が出現し、初期症状は慢性アルコール中毒に似ています。飲酒後に体内でアルコールの中間代謝物として生成されるアセトアルデヒドは、悪酔いや二日酔いの原因となります。また、喫煙によっても発生します。
《ベイクアウト》
入居前に石油ストーブなどで強制的に室内温度を35〜40℃に上げて、建材等に含まれるホルムアルデヒドを揮発させ、濃度を下げる方法をベイクアウトといいます。ベイクアウ
トをする場合は温度を上げすぎることにより室内建具などに損傷を起こさないよう注意が必要です。ホルムアルデヒド対策としてはベイクアウトだけではなく、ホルムアルデヒドの少ない建材を選択したり、注意して換気を行うことが大切です。 《F☆☆☆☆(エフ・フォースター)》
ホルムアルデヒド放散量をあらわすもので、日本農林規格(JAS)や日本工業規格(JIS)によって定められています。F☆からF☆☆☆☆までの4等級あり星の数が多いほど優良です、その中でF☆☆☆☆は最もきびしく放出量の平均値が0.3mg/?以下且つ、最大値が0.4mg/?以下でこの等級の素材は面積や用途を無制限に自由に使用できます。
F☆☆☆☆以外の等級の材料は使用面積(使用量)が制限されています。F☆は使用禁止です。
この規定外の資材では、国土交通省の大臣認定を申請し性能評価書の発行を受ける必要があります。
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